「出荷検査は合格したのに、数ヶ月後に壊れる」——その原因の多くは、基板を切り分ける工程に潜んでいます。薄膜材料の専門家・小澤隆二氏による技術解説の要旨を、分かりやすくまとめました。
スマートフォンや自動車、産業機器の中身は、大きなプリント基板の上に多数の部品を実装したあと、製品ごとの小さな基板(モジュール基板)に切り分けて作られます。小澤氏はこの「切り分ける瞬間」に着目しました。仕組みは3段階です。
分割機の刃が基板に接触した瞬間、大きな機械的衝撃が弾性波(地震の揺れと同じ性質の波)となって基板の中を端から端まで伝わります。
コンデンサなどのチップ部品の中身は1ミクロン以下の薄膜の積み重ね。弾性波の不均一な力で、目に見えない微小な亀裂が入ります。外観も検査も正常のままです。
電源のON/OFFや発熱のたびに亀裂は少しずつ成長し、ある限界を超えた時に薄膜が切断されて突然の機能停止・誤動作になります。時限爆弾のような故障です。
小澤氏は、基板にひずみゲージを取り付けて分割時のストレス(ひずみ量:με=マイクロストレイン)を実測し、方式による差を示しました。高速回転の刃(ルーター式など)は瞬間的に大きな弾性波を与えるのに対し、刃を交差させず手動で切るリニアスライスカット方式は、ひずみが桁違いに小さいという結果です。
切断面にも差は現れます。
高速回転刃で切った基板は断面のガラス繊維層が乱れるのに対し、衝撃を与えずに切った基板は繊維層が乱れることなく整った断面になります。
この差が、そのまま搭載部品へのダメージの差になります。
小澤氏の結論は明快です。高機能な基板は、できる限り小さな弾性波で、残留ひずみを残さずに分割しなければならない。そのためには、上刃と下刃を交差させず、瞬間的な衝撃を与えない分割機を選ぶことが重要です。VELXが取り扱う基板分割機は、まさにこの考え方(リニアスライス方式・上下刃非交差構造)に基づいて設計されています。
小澤 隆二(Lyuji Ozawa)/L. L. Technology(米国ニューヨーク)テクニカルコンサルタント。ブラウン管や蛍光ランプに使われる蛍光体(薄膜発光材料)研究の国際的な専門家として約40年の実務経験を持ち、米国の科学出版社CRC Pressから『Cathodoluminescence: Theory and Applications』(1990)、『Cathodoluminescence and Photoluminescence: Theories and Practical Applications』(2007)などの専門書を出版。薄膜チップの物性に精通した立場から、基板分割が電子部品に与える影響を解説しています。
出典:小澤隆二「電子機器の信頼性はモジュール基板の分割法に大きく依存」(MOA JAPAN配布・参考資料、全12ページ)。本ページはその要旨の再構成であり、原文の見解は著者に帰属します。